ブラームスの4つの協奏曲は、いずれもこのジャンルとしてはシンフォニックに書かれておりますが、中でも2番目のピアノ協奏曲は4楽章制をとっており、きわめて交響曲的な作品となっております。
ブラームスがこの作品を着想したのは、1878年のイタリア旅行直後のことでございます。イタリアの風光はブラームスに強い感銘を与え、第2ピアノ協奏曲のもつ伸びやかさや明るさにはイタリアの印象が反映されていると考えられます。
1876年の第1交響曲の発表以来、ブラームスにはオーケストラ作品の豊饒期が訪れており、1877年の第2交響曲に続き、78年にはヴァイオリン協奏曲が書かれました。1880年には「大学祝典序曲」「悲劇的序曲」が作られ、ピアノ協奏曲第2番はその翌年、1881年に2度目のイタリア旅行後に完成しました。
初演はこの年の11月にブラームス自身のピアノ独奏でブダペストで行われ、大成功を収めました。
4楽章制は協奏曲としては異例ですが、本来ブラームスはこの形をヴァイオリン協奏曲で採用するつもりでした。実際この曲では、中間楽章としてスケルツォと緩徐楽章を書き進めていたのですが、最終的にはこれらを破棄して現行の3楽章制に落ち着きました。しかし、このアイディアは第2ピアノ協奏曲で実現されたわけでございます。
ブラームスが一般的な協奏曲と異なり、非常に交響曲に近い内容の協奏曲を書こうとしたことは、単に4楽章制というだけでなく、各楽章にカデンツァらしいものがほとんど見られない点でも明らかです。初演時に「オブリガート付き交響曲」と揶揄された第1ピアノ協奏曲にさえカデンツァはありました(第1楽章を除く)が、第2ではまさにピアノとオーケストラのための交響曲に徹したという感がございます。
4つの楽章は両端楽章の間にスケルツォと緩徐楽章を挟む形をとっております。
第1楽章は冒頭にピアノがカデンツァふうに絡んでまいりますが、その後は管弦楽提示部を含む古典的協奏曲のソナタ形式でございます。
第2楽章はスケルツォですが、規模はかなり大きく、また全楽章中唯一の短調楽章で、ドラマティックな音楽となっております。ちなみに、スケルツォ主題の冒頭はセレナーデ第1番第2楽章スケルツォ主題と同じものでございます。
第3楽章はロマンスふうの音楽ですが、ここにはブラームスがイタリア旅行で得た南欧的情緒が聴き取れる気がいたします。
続く第4楽章も、同じくイタリアの印象の反映なのか、ブラームスにしてはずいぶん軽やかでチャーミングな音楽で、快適かつ爽快に全曲を閉じております。
もし強いて申すならば、重厚な交響曲的雰囲気の前半2楽章を承けて全曲を閉じる終楽章が、こんなに軽快でいいのか?というバランス面での疑問がないわけでもありませんが、典雅な楽想に彩られたこのロンドは、とりあえずそのような邪念を忘れさせる魅力をもっていることは事実でしょう。
ここではブラームス自身の編曲した2台ピアノ用のアレンジを使用しております。お楽しみいただければ幸甚です。