スティーヴン・フォスター/歌曲集
(Stephen Foster : Songs)

スティーヴン・フォスターは、歌曲の分野で19世紀のアメリカを代表する作曲家でございます。その作品のいくつかは日本でもよく知られ、明治以来の日本人にとってはもっとも身近なアメリカ人作曲家といえるかもしれません。

フォスターは専門的な音楽教育を受けなかったにもかかわらず、十代ですでに歌曲の分野で頭角を現し、二十歳以降は当時流行していた「ミンストレル・ショー」のために書いた歌曲が次々にヒットして、作曲家としての地歩を固めました。
ところが、著作権保護という思想の確立していない時代であった上に、フォスター自身の世渡りの拙さもあり、楽譜は売れても収入につながらない(出版社だけが儲ける)、という状況が続きます。

1861年に始まった南北戦争は、フォスターの破滅の幕開けとなりました。出版事情の悪化に加え、北部に属するフォスターの曲は南部では演奏されなくなり、「ミンストレル・ショー」の趣向も戦時向きに変化して、ヒット曲が出なくなったのでございます。
もともと多くなかった収入は一気に激減、安宿を泊まり歩くようになったフォスターは、次第にアルコールに溺れてまいります。現代で申せば、ネットカフェ難民に近い状態と申せましょう。

1864年の1月、体調を崩したフォスターは宿の部屋で倒れます。倒れる際に洗面台(水を入れた容器?)が砕けるほど強く頭をぶつけ、大量に出血し、結局それがもとで世を去ったというのですから、なんとも悲惨な話でございます。
南北戦争終結後、フォスターの曲は再び人気を取り戻し、ついには世界中で愛唱されるに至ったのは、みなさまご存知のとおりでございます。

「あそびの音楽館」では、フォスターの歌曲からいくつかの作品を、折に触れてアップしていきたいと思っております。

フォスターの歌曲には、通常のヴォーカルとピアノのために書かれたものの他に、独唱と合唱を要求するものが相当数ございます。これはおそらく「ミンストレル・ショー」で演奏するための編成と思われますが、人の声の満足な音源を持たない弊サイトとしましては、その都度Jun-Tの思いつきでテキトーな楽器にアレンジしたものを提供させていただくしかございません。
また、原曲のピアノ伴奏は、ひと口に申し上げて単純明快、少々ひねりがなさすぎる気がいたしますが、ここはあえて手を加えず、原曲の素朴さをそのままにしておくことにいたしました。瀧廉太郎の場合のように最初から伴奏が存在しなければ、やりたい放題の伴奏をでっち上げるところでございますが、ここでは自粛いたしますm(__)m(※1)

なお、歌詞につきましては、藤井宏行様の御訳(※2)を使わせていただいております。どうもありがとうございますm(__)m
また、各曲の詳細につきましては、「梅丘歌曲会館・詩と音楽」に詳しい解説が掲載されております。こちらもぜひご覧になってくださいm(__)m

※1:この決意は早くも崩れ、あちこちで好き勝手に手を入れております。ご了承くださいm(__)m
※2:訳詞の一部に差別的な用語がありますが、これは原詩のニュアンスを的確に表現するための語彙選択であり、差別的意図はないことをご了承ください。


***1844年〜1854年***
 君の窓を開けて、恋人よ(Open Thy Lattice Love) 
 ここによき時代が来るのだ(There's a good Time coming) 
 おお!スザンナ(Oh! Susanna) 
 ネリーはレディだった(Nelly was a Lady) 
 キャンプタウンの草競馬(De Camptown Races) 
 カ・イ・ロの道を下って(Way down in C-a-i-r-o) 
 ああ!赤いバラよいつまでも咲いていてくれ 
  (Ah! May the red Rose live always)
 ネリー・ブライ(Nelly Bly) 
 あなたは行ってしまうの、愛しい人?(Wilt Thou be gone,Love?) 
 鳴れ、鳴れ、バンジョー!(Ring, Ring de Banjo!) 
 故郷の人々(Old Folks at Home) 
 ぼくのそばのマギー(Maggie by my Side) 
 老犬トレイ(Old Dog Tray) 
 わが懐かしいケンタッキーの家よ、おやすみ! 
  (My old Kentucky Home, Good Night!)
 厳しき時代よ、もう二度と来ないで(Hard Times come again no more)
 明るい茶色の髪のジニー(Jeanie with the Light Brown Hair) 

***1855年〜1864年***
 やさしかったアニー(Gentle Annie) 
 グレンディ・バーク号(The Glendy Burk) 
 サトウキビ畑を下ったところ(Down among the Cane-Brakes) 
 オールド・ブラック・ジョー(Old Black Joe) 
 シャンハイに金を賭けちゃだめだ(Don't bet your Money on de Shanghai) 
 我らは馳せ参じます、大統領エイブラハム、30万人もの軍勢が 
  (We are coming, Father Abraam, 300,000 more)
 愛しのリーナ・クレア(Gentle Lena Clare) 
 よりよき時代がやってくる(Better Times are coming) 
 私の兄は戦場にいましたでしょうか?(Was my Brother in the Battle?) 
 海には魚がたくさんいるわ(There are plenty of Fish in the Sea) 
 俺のカカアは何でもお見通し(My Wife is a most knowing Woman) 
 ラリーのお別れ(Larry's Good Bye) 
 ウイリーは戦場に行ってしまった(Willie has gone to the War) 
 このひどい戦争が終わったら(When this dreadful War is ended) 
 兄さんを私のもとに返してください(Bring my Brother back to me) 
 親愛なる旗の下でぼくは死ぬんだ!(For the dear old Flag I die!) 
 口髭さえあればいいんです(If You've only got a Moustache) 
 夢見る人(Beautiful Dreamer) 
 過ぎ去ったあの声(The Voices that are gone) 

 フォスター歌曲集(1844年〜1854年)・連続再生 
 フォスター歌曲集(1855年〜1864年)・連続再生 

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◇背景画像提供:フリー写真素材Canary様
◇編 曲・MIDIデータ作成:Jun-T ◇録 音:jimma