チャイコフスキー/白鳥の湖 作品20
(Tchaikovsky : Swan Lake, Op.20)

1875年の春、モスクワのボリショイ劇場はチャイコフスキーに新作バレエの作曲を委嘱し、「白鳥の湖」と題された台本を作曲者に渡しました。この時期、チャイコフスキーは音楽院での授業と作曲、それに加えて新聞紙上での評論執筆と多忙でしたが、それでもこの仕事を引き受けました。その年の秋、チャイコフスキーはリムスキー=コルサコフに宛てて、以下のように書いております。

「モスクワ総局の要請で、私はバレエ『白鳥の湖』の音楽を書いています。この仕事を引き受けたのは、生活に必要なお金のためでもあり、また、以前からこの種の音楽を書いてみたいと思っていたからでもあります」

作曲は第3交響曲や第3弦楽四重奏曲など、他の作品と並行して継続され、1876年4月10日に完成しました。ほほ1年間にわたる作曲期間でございます。
初演は1877年3月4日。成功とはいえなかったものの、大失敗ということでもなく、その後もしばらくの間は上演されておりました。ただし、上演はカットや音楽の差し替えなど、チャイコフスキーの原曲とは異なる形で行われており、それも1883年の上演を最後にレパートリーから外され、作曲家の生前に全曲が上演されることはありませんでした。

1894年、チャイコフスキー追悼公演として「白鳥の湖」第2幕が上演され、1895年に全曲が蘇演されました。しかし、この上演では原曲に著しく手が加えられており、ほぼ原曲に近い形での全曲上演は、ようやく1953年になってからでした。

本来の全曲は4幕構成ですが、今日ではもとの第1幕と第2幕を合わせて第1幕とし、全3幕構成で上演されるのが一般的のようでございます。
中世のドイツ地方を舞台とし、王子ジークフリートと悪魔ロットバルトの呪いで白鳥に変えられた王女オデットの悲恋を描いた物語ですが、チャイコフスキーの他のバレエとは異なり、音楽ばかりでなく台本にも、同時代から現代まで様々な手が加えられており、ラストもバッドエンドとハッピーエンドがございます。

ここで取り上げておりますピアノ用のスコアは、チャイコフスキーの友人でモスクワ音楽院の同僚でもあったニコライ・カシュキン(Nikolay Kashkin;1839〜1920)によるものです。この編曲はチャイコフスキー自身の要望で作曲直後に作られたもので、原曲にもっとも近い姿と考えられます。ただし、最初の「イントロダクション」のみは、チャイコフスキー本人が編曲しております。
ピアノで演奏された「白鳥の湖」、お楽しみいただければ幸甚です。


イントロダクション(Introduction) 

【第 1 幕】(Act I)
第1曲:情景(I. Scène : Allegro giusto) 
第2曲:ワルツ(II : Valse) 
第3曲:情景(III : Scène : Allegro moderato) 
第4曲:パ・ド・トロワ(IV : Pas de trois) 
第5曲:パ・ド・ドゥ(V : Pas de deux) 
第6曲:パ・ダクシオン(VI : Pas d'action) 
第7曲:シュジェ(VII : Sujet) 
第8曲:乾杯の踊り(VIII : Danse des coupes) 
第9曲:フィナーレ(IX : Finale) 
「白鳥の湖」イントロダクションと第1幕・全曲連続再生 

【第 2 幕】(Act II)
第10曲:情景(X. Scène : Moderato) 
第11曲:情景(XI. Scène : Allegro moderato) 
第12曲:情景(XII. Scène : Allegro) 
第13曲:白鳥たちの踊り(XIII. Danses des cygnes) 
第14曲:情景(XIV. Scène : Moderato) 
「白鳥の湖」第2幕・全曲連続再生 

【第 3 幕】(Act III)
第15曲:アレグロ・ジュスト(XV. Allegro giusto) 
第16曲:コール・ド・バレエと小人たちの踊り 
    (XVI. Danses du corps de ballet et des nains)

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◇編 曲:N. カシュキン ◇MIDIデータ作成:Jun-T ◇録 音:jimma