チャイコフスキー/四季(12の性格的描写)作品37a
(Tchaikovsky : Les saisons - 12 Morceaux caracteristiques, Op.37a)

1875年の11月、チャイコフスキーは月刊の音楽雑誌「ヌーヴェリスト」から雑誌掲載用のピアノ小品の作曲依頼を受けました。この雑誌は、それ以前にもチャイコフスキーに歌曲の作曲を依頼しており、それらは1873年11月号、1874年1月号、1875年9月号と11月号に、計4曲が掲載されました。これらが好評だったのでしょうか、今回の依頼は単発ではなく、1年間にわたる長期連載の提案となりました。
「ヌーヴェリスト」からは1年の各月に対応した曲名が提示され、チャイコフスキーはそれに従って作曲する、という条件が与えられました。チャイコフスキーは「ヌーヴェリスト」発行者のニコライ・ベルナールに宛てた手紙で、大略以下のように書いております。

「私はあなたの気配りと、充分な報酬のお約束に対してたいへん感謝しております。さっそく、最初の作品を送ります。次の何曲かも、すぐに出来上がるでしょう。現在、私はピアノ曲の作曲で夢中になっています。ご提案のタイトルには忠実に書くつもりです」(1875年12月6日)
「最初の2つの曲を送ります。曲が長すぎたり貧弱だと思われるのではないかという不安がなくはありません。どうか率直なご意見をお聞かせください。今後の作品に、あなたのご意見を生かしたいと思いますので。もし曲を書き直す必要があれば、その旨お知らせください」(1875年12月25日)
「直接お話しする勇気が出ないので、手紙で失礼します。実は金銭的に困窮しておりますので、先払いで200ルーブルをお願いできませんでしょうか?もし残りの曲の分をお支払いいただけるなら、心から感謝いたします」(1876年2月4日)

この時期、チャイコフスキーは「白鳥の湖」を作曲中で、このバレエを4月の終わりに完成した後、「6月」から「12月」までを一気に書き上げ、全曲の完成は5月下旬と考えられます。
曲は1月号から順に1年間連載されましたが、その際に、ベルナールによってさまざまな詩人の詩句が併記されました。

この曲集は、チャイコフスキーのピアノ曲の中では、ずば抜けて有名な作品と申せましょう。
ちなみに、作品番号の「37a」についてですが、これは作品の出版が雑誌掲載から10年後になったため、実際の作曲時期とずれてしまうことを気にしたチャイコフスキーが、あえて作曲時期の近い作品37の「グランド・ソナタ」と同じ作品番号にすることを希望したという事情がございます。このあたり、妙に几帳面なチャイコフスキーという気がいたします。


1月:炉端で(January : By the Hearth) 
2月:謝肉祭(February : Carnival) 
3月:ひばりの歌(March : Song of the Lark) 
4月:雪割草(April : Snowdrop) 
5月:白夜(May : White Nights) 
6月:舟歌(June : Barcarolle) 
7月:草刈り人の歌(JuLy : Song of the Reaper) 
8月:収穫の歌(August : Harvest Song) 
9月:狩人の歌(September : Hunter's Song) 
10月:秋の歌(Octorber : Autumn Song) 
11月:トロイカ(November : Course en Troïka) 
12月:クリスマス(December : Noël) 

四季(12の性格的描写)作品37a・全曲連続再生 

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◇背景画像提供:自然いっぱいの素材集
◇MIDIデータ作成:Jun-T ◇録 音:jimma