◇「ボリス・ゴドゥノフ」第1幕のあらすじ◇
文中、この色で表示されておりますのは、オペラの中の主要人物でございます。

第1幕は2つの場からできております。

第1場はチュードヴォ修道院の僧房。つまり、お坊さんの住まいですね。

真夜中でございます。偉いお坊さんのピーメンが、徹夜で年代史を記述しております。生涯をかけた年代史もいよいよ最後の章になり、ボリスの悪行を記録するところにさしかかっております。

隅で寝ていた若い修道僧グリゴリーが目覚め、モスクワの高い塔のてっぺんから落っこちるという悪夢を見た話をいたします。それは若気のいたずらじゃ、とピーメンは言い、自らの若い頃の話を始めます。

そのうちに話題はボリスのことになり、グリゴリーボリスディミトリーを殺害して帝位を手に入れた極悪人(?)であることを知るのでございます。

第2場はリトアニア国境に近い居酒屋。

色っぽい女主人が退屈のあまり、独り身は身体が疼いてたまらんわ、という歌を歌っておりますと、そこへホームレス風の三人組が現れます。破戒僧(要するに、自主的にクビになったお坊さんですね)ワルラームミサイール、それに修道院を脱走してきたグリゴリーでございます。

なぜグリゴリーが脱走したかと申しますと、ピーメンディミトリーのことを聞き、ひとつ自分がその皇太子に成り代わり、ポーランドに亡命して一旗上げてやろうと、大それた野望を抱いたのでございますね。えらい発想の飛躍でございます。

さて、ワルラームミサイールが酒をかっ食らっておりますと、役人が入ってまいります。
役人は修道院から逃げ出したグリゴリーを逮捕に来たのですが、不幸にして字が読めません。手配書を出して「字の読める者はいないか」と尋ねます。
ワルラームミサイールも当然読めません。するとグリゴリーが「私が読みます」と申し出まして、「名前はグレゴリー・オトレピエフ、年齢50歳、赤ら顔で太鼓腹」とワルラームの特徴そのままに読み上げます。
驚いたワルラーム、手配書をグリゴリーの手から奪い取り、「俺だってゆっくりなら読めるんだ。冗談じゃない」と、たどたどしく読み始めます。
「ねん、ねん、ねんれいは…にじゅっさい…どこが50歳だよ、ゴルア!」
勢いづいたワルラーム、急に頭が冴えたのか、手配書をアッチェレランドで読み下してまいります。「中肉中背、痩せ型、赤毛、鼻にいぼがひとつ、額にもひとつある…」
一同、グリゴリーを注視。「こりゃ、おまえのことじゃねぇか!」

脱兎のごとく駆け出すグリゴリー。大騒ぎのうちに幕となります。

(2008.12.21〜2010.11.17/Jun-T)
◆ウインドウを閉じる◆