◇「ボリス・ゴドゥノフ」第3幕のあらすじ◇
文中、この色で表示されておりますのは、オペラの中の主要人物でございます。

第3幕は2つの場からできております。

第1場はポーランド、サンドロミルのムニシェック城内のマリーナの化粧室。

マリーナはポーランドの有力貴族ムニシェック家の令嬢でございますが、退屈な日々に飽き飽きしながら鏡に向かっております。
侍女たちがマリーナの無聊を慰めようと愛の歌を歌いますが、マリーナはうんざりしたように侍女たちを下がらせ、「私はもっとドキドキしたい、ノーマルな恋愛では興奮できないの」と、取りようによってはかなり危ない独白をいたします。

そういうマリーナにとって、ある日突然現れたディミトリー(つまり、修道院を脱走したグリゴリーのことですね)は魅力的。なにしろ、この男は自称ロシアの皇太子なのですから。
マリーナディミトリーがポーランド軍を率いてロシアに攻め込み、激闘の末ボリスの政権を崩壊させるさまを想像して胸をときめかせております。とても並のお嬢様ではございませんね。

マリーナがひとり興奮しておりますと、ジェスイット僧のランゴーニが登場いたします。ジェスイットと申しますのは、まぁローマ・カトリックの一派でございますね。このランゴーニは、ディミトリーを利用して、ロシア正教会(ギリシア正教)をカトリック化しようと企んでおります。
ランゴーニに説き伏せられたマリーナは、カトリック教会のため、色仕掛けでディミトリーを虜にし、その妻となってともにロシアに攻め入ることを誓うのでありました。

第2場はムニシェック城内の庭園、泉のほとりでございます。

月光のもと、ディミトリーがひとりマリーナを待ちわびておりますと、ランゴーニが現れてカトリックへの改宗を促し、結局ディミトリーは改宗を決意いたします。

城に招かれていた客たちが続々と現れ、華麗なポロネーズが繰り広げられます。
ロシアオペラのポロネーズと申しますと、有名どころはまずチャイコフスキーの「オネーギン」終幕のそれでございましょうか。チャイコフスキーの曲が洗練されているのに対し、「ボリス」のポロネーズは無骨ながら、逞しい生命力を感じさせるように思えます。

さて、ポロネーズが終わり、ひと気のなくなった泉のほとり。
マリーナが登場いたしますと、おあずけをくらっておりましたディミトリーが、さかりのついた犬のように彼女に迫ります。もはやディミトリーマリーナへの恋慕でメロメロになっておりまして、ロシア進軍などどうでもいい様子。
それを見たマリーナ、「ただの男に堕ちちゃったアンタなんかには興味ないわよ」と突っぱねます。
袖にされて頭にきたディミトリー、「バカにしやがって。見てろ、俺はロシアを征服して、皇帝になっておまえを見返してやる!」と怒号いたしますと、急に目を潤ませたマリーナ、「その言葉を待ってたの。気概をなくしたアンタにちょっと喝を入れたのよ。私はあなたのもの」と囁くので、またまたディミトリーはメロメロ^^;

ともかく、壮麗な愛の二重唱で幕は閉じるのでございました。

(2009.1.4〜2.16/Jun-T)
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