まだ私がDTMというものに手を染めます以前、内輪でピアノ連弾を楽しもうと細々と既成の曲を編曲しておりました頃、「魔笛」とともに取り上げたのがこの「ボリス」でございました。当時はjimmaと連弾して遊んでいたのですが、二人ともピアノの力量に大いに問題がございますので、必然的に演奏テクニックも私どもの許容範囲で楽しめるようなレヴェルで編曲いたしました。
もちろん全曲の編曲など思いも及ばず、弾いて面白そうな箇所をつまみ食いするようなカットだらけのアレンジでございました。
2004年の年頭にこのサイトを立ち上げる際、掲載曲を水増しするために、編曲のできている中から「プロローグ」の2つの場面を録音してアップいたしましたが、そのときにはそれで打ち止めのつもりでおりました。
その後しばらくしてから、以前に編曲した第4幕第3場に手を加えてアップしました。このときはもう自分たちのピアノの腕を考慮する必要はございませんでしたので、大いに好き勝手な編曲といたしました。が、その際にも全曲の編曲などという大それた考えはもっておりませんでした。
2008年の暮れ、久しぶりに「ボリス」のスコアを見てみましたら、無性にピアノでやってみたい衝動に駆られ、この曲の編曲を再開いたしました。年末から翌2009年の2月にかけて、第1幕第2場、第3幕全曲、第2幕全曲と、オペラのかなりの部分を編曲することができました。
続いて第4幕第1場を編曲しようとして、ひとつ問題が発生しました。
第1場に相当する「聖ヴァシーリー寺院前の広場」は、1869年の最初の稿にはあったものの、その後1871〜72年の改訂の際に削除され、弊サイトでは第3場としております「クロームィ近郊、森の中の空き地」に差し替えられたという経緯がございます。このとき、もともと「聖ヴァシーリー寺院前の広場」にあった「愚者と子供たちの場面」だけが、そのままの形で「クロームィ近郊、森の中の空き地」の中に挿入されました。
すなわち、「愚者と子供たちの場面」は、「聖ヴァシーリー寺院前の広場」と「クロームィ近郊、森の中の空き地」の両方に存在するわけでございます。この2つの場を全曲に含めようとするなら、どちらかで「愚者と子供たちの場面」をカットしなければなりません。
ストーリー的にはこの場面は、いうまでもなく「聖ヴァシーリー寺院前の広場」にあるのが本来の姿ですし、流れとしても自然なのですが、弊サイトでは既に2004年に「クロームィ近郊、森の中の空き地」を第4幕第3場としてアップしており、「愚者と子供たちの場面」もその中に含めてしまいましたので、「聖ヴァシーリー寺院前の広場」を第1場として編曲する際に、この場面をどう処理するかが問題になったのでございます。
本来ならば、アップ済みの「クロームィ近郊、森の中の空き地」から「愚者と子供たちの場面」を削除し、「聖ヴァシーリー寺院前の広場」に含めるのがベストなのですが、なにしろ私は怠惰なもので、既にアップ済みの編曲に大改訂を施す気力がなく、この場面は「聖ヴァシーリー寺院前の広場」の方からカットすることでご勘弁いただく、ということにいたしましたm(__)m
2010年の11月になって、まだ残っている場を編曲してなんとか全曲完結にこぎつけようという気になり、全曲の中でもっとも地味な割には編曲の難しそうな第1幕第1場に手を出し、それも終わりますと、いよいよ残るは第4幕第2場、「ボリスの死」の場面だけとなりましたが、ここではるか昔にアップ済みの「プロローグ」が気になってまいりました。
「プロローグ」の2つの場面は、最初に書きましたように、内輪で弾いて楽しむために、テクニック的にも容易で、しかもカットもありましたので、この機会に新たに編曲し直すことにして、まず第1場をアップしました。続いて第2場もアップし、ひとまずプロローグ全曲が完結して、いよいよ第4幕の「ボリスの死」の場を残すのみとなりました。
第2場の編曲は12月27日に出来上がり、録音も2日後に完了して、暮れも押し迫った12月30日にどたばたとアップいたしました。
というような次第で、弊サイト開設以来7年近くに亘って断続的にアップしてまいりました歌劇「ボリス・ゴドゥノフ」も、ようやく全曲完結の日を迎えることができました。ピアノ連弾版「ボリス」に興味をお持ちくださる方がはたしてこの世に存在するのか、非常に疑問なところではございますが、ともかくも大仕事を終えたということで、ある程度の感慨と脱力感を覚えております年の瀬でございます。
編曲も演奏も、行き届かない点が多々あるとは存じますが、多少なりとも面白いと思ってくださる方があれば幸甚でございますm(__)m