The Dawn and The Return of Siegfried

グンターの帰りを迎えるため、ハーゲンがギービヒ家の家臣団を召集いたします。
時ならぬハーゲンの呼び出しに、戦でも始めるのかと意気込んで集まる家臣たちですが、ハーゲンが「グンターが妻を娶り、同時にジークフリートも婚礼を挙げることになったから、祝うためにみなを集めたのだ」というと、緊張を解いて大笑い。日ごろは陰気なハーゲンの、意外なまでの陽気な様子に家臣たちの心の和み、グンターを迎える大合唱となります。
やがてグンターが帰還し、ブリュンヒルデを伴って船から下りると、新郎新婦を祝福する結婚行進曲が鳴り響くのでございました。

曲はハーゲンが家臣団を召集する呼び声で始まりますが、この部分でワーグナーは非常に大胆な音遣いを敢行しております。嬰ヘ音とハ音の持続の上でハ長調のファンファーレが鳴り響く箇所は、まるで複調のような尖鋭さでございます。
召集に応じて家臣団が登場すると、「指環」全曲中でも数少ない合唱が活躍する部分となります(これほどの大作であるにもかかわらず、「指環」の中で合唱が使われるのは「神々の黄昏」のみでございます)。ここではハーゲンと合唱が掛け合いながら大きく盛り上がり、やがてグンターを迎えて結婚行進曲が鳴り渡ります。
この結婚行進曲はそれまでの音楽とはうって変わって非常に単純な和声でできており、一種空疎な響きがいたします。さながらハーゲンとブリュンヒルデの、実体のない結婚を象徴しているかのようでございます。
(2013.10.14)

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