シベリウス/交響詩(音詩)集
(Jean Sibelius : Tone Poems)

Jean Sibelius 交響詩は交響曲とともにシベリウスの生涯を貫く主要ジャンルでございます。1892年の「エン・サガ」から1926年の「タピオラ」まで、その創作時期はおよそ35年にわたっており、これはシベリウスの主な活動期間のほぼ全域を占めていると申せましょう。

リストが創始した交響詩は、ルヒャルト・シュトラウスによってジャンルとしての最盛期を迎えました。リヒャルト・シュトラウスがそれらの作品を発表したのは1888年から1898年にかけてのおよそ10年間で、これはシベリウスの初期の活動時期に相当します。

同世代のドイツの作曲家が交響詩で脚光を浴びていることは、シベリウスに多少なりとも刺激を与えたのではないでしょうか。1892年の実質的デビューから1899年までのおよそ8年間に、シベリウスは「エン・サガ」「春の歌」「レミンカイネンとサーリの乙女たち」「トゥオネラの白鳥」「トゥオネラのレミンカイネン」「レミンカイネンの帰郷」「フィンランディア」と、少なくとも7曲の交響詩的作品を書いております。
20世紀に入ると、リヒャルト・シュトラウスは交響詩から離れてオペラに軸足を移しますが、シベリウスは折にふれて交響詩を作り続けます。1906年から1914年まで、約8年間に「ポホヨラの娘」「夜の騎行と日の出」「吟遊詩人」「ルオンノタール」「大洋の女神」などが生まれ、シベリウスの創作期中期を彩っております。
1910年代の終わりから約10年間はシベリウス創作期後期となりますが、この時期には交響詩としては唯一「タピオラ」が書かれたのみでした。そして「タピオラ」をもってシベリウスの主要作品のリストはほぼ締めくくられたのでございます。

リヒャルト・シュトラウスが交響詩を標題音楽の究極として単に物語性を追求するばかりでなく、ニーチェ哲学から果ては自叙伝に至るまでを音楽化しようとしたのに対し、シベリウスの交響詩はより抽象的で、標題にとらわれない自立した音楽と申せましょう。それらは祖国フィンランドの息吹きを伝えながらも、その抽象性によってローカルな枠組みを超えた普遍性を獲得していると申してもよろしいかと存じます。

「あそびの音楽館」では、シベリウスの交響詩的作品から、2台ピアノ用または1台四手用にアレンジしたものを折にふれてアップしてまいりたいと思っております。
当然ながら原曲の色彩感は失われ、面白みに欠ける仕上がりになっておりますが、これをきっかけにシベリウスの交響詩に多少なりとも興味をおもちいただければ幸甚でございます。

なお、シベリウスは自作の交響詩を「交響詩」と表記することはほとんどなく、多くは「音詩」と称しております。実際に正式にスコアに「交響詩」と書かれておりますのは、最後の作品「タピオラ」のみでございます。
しかしながら、ここでは交響詩的作品は一括して「交響詩」とさせていただきますので、その点ご了承願います。


 エン・サガ 作品9 (En Saga, Op.9) 

 春の歌 作品16 (Spring Song, Op.16) 

 レミンカイネン組曲 作品24 (Lemminkäinen Suite, Op.22) 

 フィンランディア 作品26-7 (Finlandia, Op.26-7) 

 ポホヨラの娘 作品49 (Pohjola's Daughter, Op.49) 

 夜の騎行と日の出 作品55 (Night Ride and Sunrise, Op.55) 

 吟遊詩人 作品64 (The Bard, Op.64) 

 ルオンノタール 作品70 (Luonnotar, Op.70) 

 大洋の女神 作品73 (The Oceanides, Op.73) 

 タピオラ 作品112 (Tapiola, Op.112) 

◇あそびのピアノ連弾に戻ります◇
◇背景画像提供:フリー写真素材Canary様
◇MIDIデータ作成:Jun-T ◇録 音:jimma